建設業許可を受けるための『経営業務の管理責任者」の要件

「建設業許可」を受けるにはその建設工事について十分な経営経験がある「経営業務の管理責任者」が必要です。
ポイントは経営経験であれば何でもいいということではなく、「建設業」の経営経験が求められるということです。
そこで、「建設業許可」における「経営業務の管理責任者」についてご説明します。
目次
経営業務の管理責任者とは
「経営業務の管理責任者」は省略して「経管(けいかん)」と呼ばれ、建設業の経営業務について営業取引上、対外的に責任を有する地位にあり、総合的に管理・執行した経験がある者をいいます。
簡単にいうと「建設業の経営者」としての経験が十分にある人のことです。
ここでいう、経営者とは法人では「常勤の役員」、個人では「事業主本人または支配人」、その他に「支店長、営業所長等の地位にあって、経営業務を総合的に執行した経験のある者」のことをいいます。
法人での「常勤の役員」とは具体的には持分会社の業務を執行する社員、株式会社もしくは有限会社の取締役、指名委員会等設置会社の執行役、これらに準ずる者が該当します。
役員の具体例 | ・株式会社の取締役 ・有限会社の取締役 ・合名会社の社員 ・合資会社の無限責任社員 ・民法の規定により設立された社団法人、財団法人又は協同組合、協業組合の理事 |
※「これらに準ずる者」とは
法人格のある各種組合等の理事等をいい、執行役員、監査役、会計参与、監事及び事務局長等は原則として含まないが、業務を執行する社員、取締役又は執行役に準ずる地位にあって、許可を受けようとする建設業の経営業務の執行に関し、取締役会の決議を経て取締役会又は代表取締役から具体的な権限委譲を受けた執行役員等については、含まれるものとする。
「これらに準ずる者」に該当するかどうかは事前に許可行政庁との協議が必要です。東京都の場合、認められるには非常に狭き門と思われます。
経営業務の管理責任者が常勤でいる必要があります
建設業許可を受けるためには「経営業務の管理責任者」が常勤で1人いなければなりません。
※常勤とは
原則として、本社、本店等において、休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事していることをいいます。
常勤ですから、建設業をしている他社の技術者を兼ねたり、他の法令により専任性を要するとされる例えば「管理建築士」や「宅地建物取引士」等と兼ねることはできません。(ただし、同一法人で同一の営業所である場合は兼ねることができます。)
経営業務の管理責任者になるための要件は5年以上の経営経験です

「経営業務の管理責任者」になるためには次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 許可を受けようとする建設業の業種について5年以上の経営経験がある。
- 許可を受けようとする建設業の業種以外について6年以上の経営経験がある。
- 経営業務に関し具体的権限委譲を受けた執行役員等の地位で許可を受けようとする建設業の業種について5年以上の経営経験がある。
- 6年以上経営業務を補佐した経験がある。
- 国土交通大臣に認められている。
上記を表にすると以下のようになります。
1 | 許可を受けようとする建設業(業種)に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験がある | ||
2 | 1と同等以上の能力を有するものと認められた者 | ① 許可を受けようとする建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にあって次のいずれかの経験を有する者 | a 経営業務の執行に関して、取締役会の決議を経て取締役又は代表取締役から具体的な権限委譲を受け、かつ、その権限に基づき、執行役員等として5年以上建設業の経営業務を総合的に管理した経験がある(事前協議必要) |
b 6年以上経営業務を補佐した経験がある(事前協議必要)
「補佐した経験」とは 個人事業主の死亡等により、実質的な廃業となること(許可要件がみたされたくなること)等を救済する場合に適用する基準です。(営業部長、工事管理部長等、部長クラスでの補佐経験でも認められる可能性がなくはないのですが大変困難です。) |
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②許可を受けようとする建設業以外の建設業(業種)に関し6年以上経営業務の管理責任者としての経験がある | |||
③その他、国土交通大臣が個別の申請に基づき認めたもの |
「経営業務の管理責任者」は「専任技術者」を兼任できます
「経営業務の管理責任者」は「専任技術者」を兼任できます。
小規模な会社や個人事業では両方の要件を満たせてさえいれば社長または代表者が兼任するケースがほとんどではないかと思います。「経営業務の管理責任者」は役員しかなれませんが、「専任技術者」は従業員でも要件さえ満たせていればなれますので役割を分担することもできます。
注意しなければならないのは、「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」を兼任する場合は同一の営業所に原則として常勤でいなければならないということです。支店がある場合、本社で「経営業務の管理責任者」となり、支店の「専任技術者」になることはできません。
「経営業務の管理責任者」になるには証明書類が必要です

「経営業務の管理責任者」になるためには上記の要件をクリアしている必要があるのはもちろんですが、その要件をクリアしていることを必要な期間分の証明書類で証明する必要があります。
過去の書類を紛失していたり、勤務先を変更している場合には以前在籍していた建設会社に資料提出を協力してもらう必要があるなど証明書類の収集が困難になるケースもあります。
この証明書類の収集が「建設業許可」を受けるために最も困難なハードルになると思われます。
では、具体的にどのような証明書類を準備する必要があるのかご説明します。
現在の常勤を証明するための書類
「経営業務の管理責任者」は本社または本店に常勤でいる必要があります。
そして、「建設業許可」を受けるためにはその常勤性を証明書類により証明しなければなりません。
必要な証明書類として以下のものがありますが、内容によっては追加資料の提出を求められる場合があります。
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過去の経営経験を証明するための書類
「経営業務の管理責任者」になるために必要な過去の経営経験は証明書類によって証明する必要があります。
必要な証明書類として次のようなものがあります。
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個人事業主が「経営業務の管理責任者」になるには「確定申告書」が必ず必要です
個人事業主の証明書類で重要なのが確定申告書です。
東京都の場合、税務署の受付印または電子申告の受付票がある確定申告書の第一表と第二表の提示が必要となります。
確定申告書は「経営業務の管理責任者」「専任技術者」ともに提示が必要になりますので少なくとも5年分、「専任技術者」の要件を実務経験で証明するなら最長10年分の確定申告書を提示しなければなりません。
確定申告書は法人の役員が過去に個人事業主だった期間を合算して必要な期間を証明する場合にも必要です。
確定申告書がない場合
確定申告を紛失
確定申告を税理士事務所にお願いしていて電子申告していた場合には、過去の申告書類一式のデータが残っていないか聞いてみましょう。税務署でも情報開示請求をおこなえば、過去7年にさかのぼって申告書を閲覧できるようですので相談してみましょう。
確定申告をしていない
そもそも、確定申告をしていないなら、さかのぼって確定申告ができないか税理士や税務署と相談してみましょう。
5年分さかのぼって確定申告ができれば経営業務の管理責任者の要件をクリアして建設業許可を取得できる可能性があります。
確定申告が白色申告の場合
確定申告が青色申告か白色申告かは、許可を受けるための要件になっていませんのでどちらの提示でも大丈夫です。
ただ、建設業許可申請に必要な財務諸表は決められた様式がありますので会計資料をもとに別途作成する必要があります。
まとめ
経営業務の管理責任者に必要な要件で重要なことは、必要な役職で5年または6年以上の建設業の経営経験があることです。
過去に在籍していた会社が建設業許可を受けていて、その会社で役員として登記されていれば経験年数を証明することも容易になりますが、許可を受けていない会社だと役員在籍期間に建設工事を請け負っていたことを契約書や請求書、入金が確認できる通帳などで証明する必要があります。
要件をクリアする必要もありますが証明書類を収集できるかどうかも許可取得のポイントです。