解体工事業の建設業許可

インフラの老朽化、その維持更新が重要となり建築物の老朽化に対応した適正な施工体制を確保するため建設業法等の一部を改正する法律が平成26年6月に施行されました。

この改正建設業法により建設業許可が必要な業種として新たに「解体工事業」が新設され、解体工事での事故の予防、質を確保するために法定の実務経験や資格を有する技術者を配置することが必要になりました。

では、新たに新設された「解体工事業」の建設業許可を取得するにはどうすればいいのでしょうか。
経過処置も含めて解説していきます。

「解体工事業」の新設に伴う経過処置

追記:経過処置期間は終了しています。今後は、追加申請等により解体工事業の許可を受ける必要があります。

これまで解体工事は「とび・土工工事業」の一部とされてきましたので500万円以上の解体工事は「とび・土工工事業」の建設業許可があれば請け負うことができました。

「解体工事業」が新設されたことにより、急に解体工事ができなくなってしまうのでは混乱が生じますので、これまで「とび・土工工事業」の許可を受けて解体工事をおこなってきた建設業者は平成31年5月末までは「解体工事業」の許可を受けずに解体工事を請け負うことができます。

ただし、その後も「解体工事業」を営む場合は、平成31年5月31日までに「解体工事業」の許可を申請する必要があります。

解体工事の内容、例示、区分の考え方

これまで「とび・土工工事業」の内容は以下のとおりでした。

足場の組み立て、機械器具・建設資材等の重量物の運搬配置、鉄骨等の組立て、工作物の解体等を行う工事(以下略)

この「とび・土工工事業」から下線部の「工作物の解体」を独立させたのが「解体工事業」となります。

では、新しく規定された「解体工事業」とはどのような工事を想定しているのでしょう。

区分の考え方として東京都の手引きでは以下のように記載されています。

①それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当する。
②総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、それぞれ土木一式工事や建築一式工事に該当する。

①については、例えば電気工事で信号機を解体して新しい信号機を作る場合は、これまで通り「電気工事業」で施工しますが、信号機を解体して更地にする場合でも信号機の解体は専門工事に該当し「電気工事業」でしか施工できず、「とび・土工工事業」や「解体工事業」で施工するすることができません。

②については、一戸建て住宅を壊して新築住宅を作る場合、これまで通り「建築一式工事」で施工しますが、一戸建て住宅を壊して更地にする場合は「解体工事業」でしか施工できず、「とび・土工工事業」で施工することができません。
ただし、総合的な企画・指導・調整が必要なダム又は橋梁、集合住宅、ビル等の大規模な解体工事は「土木一式工事」、「建築一式工事」に該当しますので「解体工事業」では請け負えません。

解体を伴う新設 解体のみ
各専門工事で作ったもの
例:信号機を壊して新しい信号機を作る
土木一式工事・建築一式工事で作ったもの
例:一戸建て住宅を壊して新築住宅を作る
各専門工事で作ったもの
例:信号機を壊して更地にする
土木一式工事・建築一式工事で作ったもの
例:一戸建て住宅を壊して更地にする
施行 各専門工事で施工
例:電気工事業
土木一式工事・建築一式工事で施工
例:建築一式工事業
とび・土工工事で施工 とび・土工工事で施工
施行後 各専門工事で施工
例:電気工事業
土木一式工事・建築一式工事で施工
例:建築一式工事業
各専門工事で施工
例:電気工事業
解体工事で施工
ただし、大規模解体工事は一式工事で施工

「解体工事業」が新設される前は、解体工事=「とび・土工工事業」でしたが、今後は専門工事で作ったものは専門工事で、一式工事で作ったものは解体工事で(但し規模の大きい解体は一式工事で)請け負わなければならなくなります。

では、どうすれば「解体工事業」の建設業許可を取得できるのでしょうか。

「解体工事業」の建設業許可の要件

「解体工事業」の建設業許可も他の建設業許可に必要な要件と同じように経営業務の管理責任者、専任技術者になれる人材がいて財産要件をクリアし、誠実性があり欠格要件に該当しないことが必要です。

→建設業許可に必要な5つの取得要件

ただ、これまで「とび・土工・コンクリート工事業」で解体工事を営んできた場合には経過処置があります。

解体工事業の経営業務の管理責任者の要件

「解体工事業」の経営業務の管理責任者の要件は

①「解体工事業」について5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること
②施行日以前(平成28年5月31日以前)の「とび・土工工事業」について5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること
③解体工事業と施行日以前(平成28年5月31日以前)のとび・土工工事業を合算して、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること
④上記以外の建設業で6年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること

以上のいずれかを満たす必要があります。

よく誤解されるのですが、経営業務の管理責任者としての経験とは建設工事の請負を経営者として経験してきたというもので、工事と関係ない事業で会社の役員、個人事業主を何年経験しても経営業務の管理責任者としての経験にはなりませんのでご注意ください。

解体工事業の技術者要件

「解体工事業」の特定建設業許可と一般建設業許可では必要な技術者要件が異なります。
特定建設業許可のほうが要件が厳しいので特定建設業許可の要件を満たしていれば一般建設業許可の技術者要件も満たしていることになります。

主任技術者の資格等(一般建設業許可の専任技術者)は、次のいずれかの資格等が必要

  • 監理技術者の資格のいずれか
  • 2級土木施工管理技士(土木)
    ※平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要
  • 2級建築施工管理技士(建築又は躯体)
    ※平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要
  • とび技能士(1級)
  • とび技能士(2級)
    ※合格後、解体工事に関し3年以上の実務経験を有する者(平成15年度以前の合格者は1年以上)
  • 建設リサイクル法の登録試験である解体工事施工技士
  • 大卒及び専修学校専門課程卒で専門士及び高度専門士(指定学科)3年以上、高卒及び専修学校専門課程卒(指定学科)5年以上、その他10年以上の実務経験
  • 土木工事業及び解体工事に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者
  • とび・土工工事業及び解体工事業に係る建設工事に関し12年以上の実務経験を有する者のうち、解体工事業に係る建設工事に関し8年を超える実務の経験を有する者

監理技術者の資格等(特定建設業許可の専任技術者)は、次のいずれかの資格等が必要

  • 一級土木施工管理技士
    ※平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要
  • 一級建築施工管理技士
    ※平成27年度までの合格者に対しては、解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要
  • 技術士(建設部門又は総合技術監理部門(建設)
    ※解体工事に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習の受講が必要
  • 主任技術者としての要件を満たす者のうち、元請けとして4,500万円以上の解体工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験を有する者

技術者要件の経過処置

平成33年3月31日までは「とび・土工工事業」の技術者(既存の者に限る)も解体工事業の技術者とみなされます。

(例1)解体工事業の技術者要件に該当する資格の場合

平成27年度までに合格した2級土木施工管理技士(土木)の場合、上記の解体工事業の技術者要件に該当する資格なので平成33年3月31日までは解体工事に関する実務経験又は登録解体工事講習の受講をしていなくても解体工事業の技術者とみなされます。

平成33年3月31日まで 平成33年4月1日以降
解体工事に関する実務経験又は登録解体工事講習受講なしでも解体工事業の技術者とみなす

解体に関する実務経験1年以上又は登録解体工事講習受講者は解体工事の技術者

解体工事に関し1年以上の実務経験を有している又は登録解体工事講習を受講していれば、解体工事の技術者となる。

平成33年4月1日以降も「解体工事業」を営むなら、平成33年3月31日までに①要件のある専任技術者への変更届を提出するか、同一の技術者で対応するならば②解体工事の実務経験証明書1年以上又は登録解体工事講習修了証をもって有資格区分の変更届を提出する必要があります。

①または②の対応ができなければ「解体工事業」の許可は失効します。

(例2)解体工事の技術者要件に当たらない資格

平成27年度までに合格した2級土木施工管理技士(薬液注入)の場合、上記の解体工事業の技術者要件に当たらない資格なので平成33年3月31日までは解体工事の技術者とみなされますが、平成33年4月1日以降は解体工事の技術者ではなくなります。

平成33年3月31日まで 平成33年4月1日以降
解体工事業の技術者とみなす 解体工事業の技術者ではない

平成33年4月1日以降も解体工事業を営む場合は、平成33年3月31日までに「要件のある専任技術者への変更届」を提出する必要があります。

法施行前後の「とび土工工事業」及び「解体工事業」の実務経験年数の取扱い

新とび・土工工事業の経験年数は解体工事を含む旧とび・土工工事のすべてが実務経験年数となります。

一方、解体工事業の経験年数は、旧とび・土工工事の実務経験年数のうち解体工事にかかる経験が実務経験年数となります。つまり、とび・土工工事を請け負ってきても解体工事を請け負ってこなければ解体工事の実務経験年数を計上することができないということです。

また、実務経験年数は請負契約書等の工期を確認して算出しますが、とび・土工工事と解体工事を一つの契約書で一体として請け負っていた場合には、その契約の工期が解体工事の実務経験年数となります。

期間重複の特例

原則として、同一の者が複数業種の実務経験を証明する場合、実務経験期間の重複は認められません。例えば10年間「とび・土工工事業」と「鋼構造物工事業」を営んできた場合、「とび・土工工事」で10年の実務経験を証明してしまえばもう一方の「鋼構造物工事業」は期間が重複しているので実務経験を証明することはできなくなります。

原則どおりだと、「とび・土工工事業」と「解体工事業」を営んできた場合、どちらか一方の実務経験期間しか証明できないことになりますが、期間重複の特例として、平成28年5月31日までに請け負った旧とび・土工工事の実績での実務経験に限り、同期間の中に解体工事の実績がある場合、重複していても計上が可能です。

「解体工事業」の建設業許可を取得するなら申請期限にご注意を

現在「とび・土工工事業」の建設業許可で解体工事を請け負っている建設業者様は平成31年5月31日までに「解体工事業」の建設業許可を申請しなければ、平成31年6月1日以降は500万円以上の解体工事を請け負うことができなくなります。なお、期限内に申請した場合、許可、不許可の処分があるまでの間は解体工事の許可を受けていなくても引き続き解体工事を請け負うことができます。

解体工事業の技術者要件は2021年3月31日までは「とび・土工工事業」の技術者も解体工事業の技術者とみなされますが、このみなし技術者は2021年3月31日までに要件を満たす専任技術者に変更するか、同一技術者で対応する場合は必要な要件を満たし資格区分の変更をする必要があります。

許可申請から許可がでるまでに最短でも1ヶ月はかかりますので、許可がないために解体工事が請け負えなくならないよう早めに準備しましょう。