土木一式工事の建設業許可
目次
土木一式工事とは
土木一式工事は「原則として元請業者の立場で総合的な企画、指導、調整の下に土木工作物を建設する工事であり、複数の下請け業者によって施工される大規模かつ複雑な工事」とされています。
つまり、土木一式工事は土木工作物を建設する全体をマネジメントするもので、元請けのための許可とも言えます。そのため、元請として請け負った土木一式工事のみが実務経験の対象となります。
※「プレストレストコンクリート工事」のうち橋梁等の土木工作物を総合的に建設する工事は『土木一式工事』に該当する。
土木一式工事の建設業許可は万能ではありません。
土木一式工事の建設業許可をとれば、土木系工事であればどんな工事も請け負えると誤解されていることがあります。
土木一式工事の建設業許可を持っていても、各専門工事の許可がなければ500万円以上の専門工事を単独で請け負うことはできません。
たとえば、500万円以上の道路舗装工事を単独で請け負う場合、「舗装工事業」の建設業許可が必要となり土木一式工事の建設業許可のみでは請け負えません。
自社施工の例外
土木一式工事で請け負った工事の内容である「専門工事、または附帯工事」については自社に「専門技術者」がいれば500万円以上の専門工事でも自社施工することができます。
「専門技術者」とは主任技術者になれる要件(専任技術者と同じ)を満たしている技術者です。
土木一式工事の建設業許可に必要な要件
土木一式工事の建設業許可を取得するためには経営業務の管理責任者、専任技術者になれる人材がいること、財産要件を満たしていること、誠実性があり、欠格要件に該当しないことです。
以下で具体的に見ていきます。
土木一式工事における経営業務の管理責任者
経営業務の管理責任者とは許可を受けようとする建設業の業種に関し5年以上の経営経験があるか、許可を受けようとする業種以外の建設業に関し6年以上の経営経験がある人材のことです。
ここでいう経営経験とは常勤の役員、個人事業主などの立場で土木一式工事を請負った経験です。
土木一式工事の経営経験であれば5年、その他の工事の経験(例えばとび・土工・コンクリート工事等)であれば6年以上必要になります。
また、工事を請負った期間は請負契約書、注文書、請求書と入金が確認できる通帳などで証明する必要があり、東京都の場合、各月1件以上の工事が期間通年分必要となります。
(例えば、工期が1ヶ月の請負工事であれば12件で1年分の証明、それが5年または6年分必要)
土木一式工事の専任技術者
専任技術者は営業所に常勤して専ら職務に従事する者であり、許可を受けようとする建設工事に関し、10年以上の実務経験を有するか、上記と同等以上の知識・技術・技能を有すると認められた人材です。
2級建設機械施工技士(第1種~第6種)
●1級土木施工管理技士
2級土木施工管理技士(土木)
●総合技術監理(建設)
●総合技術監理(建設「鋼構造及びコンクリート」
●総合技術監理(農業「農業土木」)
●総合技術監理(水産「水産土木」)
●総合技術監理(森林「森林土木」)
特定建設業許可を取得するには上記のうち●の資格が必要になります。
上記の資格がない場合は10年以上の実務経験で要件を満たす必要があります。
ただし、指定学科を卒業していれば5年または3年以上の実務経験に期間が短縮されます。
都市工学
衛生工学又は交通工学に関する学科
高等学校、中等教育学校で指定学科を卒業すれば5年、大学、短大、高等専門学校、専修学校で指定学科を卒業すれば3年の実務経験で専任技術者の要件を満たせます。
特定建設業の要件
特定建設業許可では土木一式工事は指定建設業とされていますので実務経験だけでは専任技術者の要件を満たすことができません。
特定建設業の土木一式工事の許可では上記●の資格に該当した上で、かつ元請けとして消費税を含み4,500万円以上の工事に関し2年以上の指導監督的な実務経験が必要です。
また、許可申請の際には専任技術者の要件を満たしている確認資料が必要となります。
国家資格者であればその合格証、免許証、監理技術者であれば監理技術者資格者証などです。
実務経験で要件を満たしている場合は実務経験の内容を確認できる資料が必要です。
誠実性
建築一式工事の建設業許可を取得する要件の「誠実性」とは法人の役員、個人事業主、建設業法施行令第3条に規定する使用人(支配人、支店長、営業所長等)が不正な行為、不誠実な行為をするおそれが明らかでないということです。
具体的には以下のような行為とされています。
「不正な行為」とは請負契約の締結または履行の際の詐欺、脅迫等、法律に違反する行為
「不誠実な行為」とは工事内容、工期等、請負契約に違反する行為
財産的基礎
建築一式工事の建設業許可を取得するためには以下の財産要件を満たす必要があります。
一般建設業許可の場合
次のいずれかに該当すること
1 自己資本が500万円以上あること。
2 500万円以上の資金調達能力があること。
3 (東京都の場合)
直前5年間東京都知事許可を受けて継続して営業した実績があり、かつ、現在東京都知事許可をゆうしていること。
[自己資本」とは、法人では貸借対照表「純資産の部」の「純資産合計」の額をいい、個人では期首資本金、事業主借勘定及び事業主利益の合計額から事業主借勘定の額を控除した額に負債の部に計上されている利益留保性の引当金及び準備金の額を加えた額をいいます。
「資金調達能力」については取引金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書(証明日から1ヶ月以内有効)で証明します。
特定建設業許可の場合
次の全ての要件に該当すること
1 欠損の額が資本金の20%を超えないこと。
2 流動比率が75%以上であること。
3 資本金が2,000万円以上あること。
4 自己資本が4,000万円以上あること。
欠損の額(欠損比率)が資本金の20%を超えないかは次の計算式で確認します。
(法人)繰越利益剰余金の負の額ー(資本剰余金+利益準備金+その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く))÷資本金×100≦20%
(個人)事業主損失(事業主借勘定ー事業主貸勘定+利益留保性の引当金+準備金)÷期首資本金×100≦20%
繰越利益剰余金がある場合や資本剰余金(資本剰余金合計)、利益準備金及びその他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計が繰越利益剰余金の負の額を上回る場合には要件をいたしているので計算式を使う必要はありません。
流動比率が75%以上であるかは次の計算式で確認します。
流動資産合計÷流動負債合計×100≧75%
申請手数料
新規で許可申請する場合の申請手数料は以下のうようになります。
東京都知事許可 9万円
国土交通大臣許可 15万円